盛岡家庭裁判所 昭和48年(家)111号 審判 1978年3月30日
申立人 上原尚美(仮名)
相手方 上原政治(仮名) 外九名
主文
1 被相続人上原義右エ門の遺産を次のとおり分割する。
(1) 別表1(略)番号一、二、七、八、九、二一、四一、ないし四七、記載の不動産は、申立人および相手方上原政治、同上原節子の持分各三分の一の割合による共有とする。
(2) 別表1(略)番号五、六、三七ないし四〇記載の不動産は、申立人の所有とする。
(3) 別表1(略)番号五〇記載の債権は申立人が取得する。
(4) 別表1(略)番号一〇、一一、一二、一八、一九、二二ないし二五記載の不動産は、申立人および相手方上原カズの持分各二分の一の割合による共有とする。
(5) 別表1(略)番号三、四、一三、ないし一七、二〇、二六、ないし二九記載の不動産は、相手方上原カズの所有とする。
(6) 別表1(略)番号三〇ないし三三記載の不動産は、相手方河田芳子の所有とする。
(7) 別表1(略)番号三六記載の不動産は、相手方河田芳子および同加藤喜美の持分各二分の一の割合による共有とする。
(8) 別表1(略)番号三四、三五記載の不動産は、相手方林礼子、同小川恵子、同大沢博、同大沢悦子の持分各四分の一の割合による共有とする。
(9) 別表1(略)番号四八、四九記載の債権は、相手方加藤喜美が取得する。
2 申立人は、
(1) 相手方河田芳子に対し金一〇五万六、八〇六円、
(2) 相手方上原カズに対し金九五万三、七五六円、
(3) 相手方加藤喜美に対し金八五万五、九六一円、
(4) 相手方林礼子、同小川恵子、同大沢博、同大沢悦子に対し各金二三万二、七二六円をそれぞれ支払え。
3 本件手続費用中、鑑定に要した費用金一一万円のうち、申立人、相手方上原政治、同上原節子、同河田芳子、同加藤喜美は各金一万七、七六五円を、相手方上原カズは金一万二、一八三円をそれぞれ負担し、残額八、九九二円は相手方林礼子、同小川恵子、同大沢博、同大沢悦子の連帯負担とし、その余の手続費用は申立人および相手方らの各自の負担とする。
理由
1 本件申立ての要旨と審判の必要
申立人は、被相続人上原義右エ門の遺産分割の調停を求め、その申立ての実情として、被相続人は、昭和四七年五月三〇日死亡し、相続が開始したが、その相続人は申立人および相手方らであるところ、被相続人の遺産の分割について上記相続人間に協議が調わないので、その適正な分割の調停を求めると述べる。
そこで、当裁判所調停委員会は、種々調停を試みたが、結局、当事者間に合意の成立をみるに至らず、昭和五一年七月九日調停は不成立に終つたので、審判手続に移行し、当裁判所は、各当事者の戸籍謄本、戸籍抄本、除籍謄本、各関係不動産の登記簿謄本、課税証明書、上原ムツミおよび上原礼子作成名義の「誓約書」、農林債券引換証、申立人、相手方上原修、同上原政治代理人上原トシコ、同大沢悦子、同大沢博、同小川恵子、同上原カズ、参考人大沢ムツミに対する各審問の結果、鑑定人国定貢の鑑定結果、当裁判所調査官の調査結果等を総合して、次のとおり判断する。
2 相続人およびその法定相続分
被相続人上原義右エ門は、昭和四七年五月三〇日死亡し、相続が開始したが、その相続人および法定相続分は次のとおりである。
(1) 二男上原政治 法定相続分八分の一
(2) 二女上原カズ 同上
(3) 三女河田芳子 同上
(4) 五女上原節子 同上
(5) 六女加藤喜美 同上
(6) 五男上原修 同上
(7) 養子申立人 同上
(8) 三男亡上原政一(昭和三一年一月六日死亡)の代襲相続人
(イ) 同人の長女林礼子 法定相続分三二分の一
(ロ) 同人の二女小川恵子 同上
(ハ) 同人の二男大沢博 同上
(ニ) 同人の三女大沢悦子 同上
3 相続財産の範囲および価額
被相続人の相続開始時の相続財産の範囲および価額並びに本件鑑定評価時における価額は、別表1(略)記載のとおりであると認められる。
なお、相手方修は、以上のほか、現金、預金、動産等が相続財産として存在する旨主張するが、その内容については金額その他何ら具体的な主張がないうえ、特に財産的な価値のあるものとして本件遺産分割において考慮すべき動産等の存在を認めるに足りる証拠もないので(その余の当事者はこれらについて主張しない)、本件遺産分割においては、これを考慮しない。
4 特別受益
(1) 相手方カズ
相手方カズは、昭和八年一〇月一日父方伯父上原浩吉と養子縁組をしたが、その際、被相続人が、かねて相手方カズ名義で自作農創設特別措置法に基づく売渡しを受け、同女に貸与して耕作させていた別表2(略)記載の土地を同女に贈与したことが認められ、これらの土地の受贈は、同女の具体的相続分を決定するに当つて考慮すべき特別受益というべきである。
(2) 相手方修
相手方修は、昭和二九年一〇月三〇日頃、被相続人から生計の資本として別表3(略)記載の不動産の贈与を受けたことが認められ、これらの不動産の受贈は、同人の具体的相続分を決定するに当つて考慮すべき特別受益というべきである。
(3) 申立人
被相続人は、当初二男上原政治に家督相続をさせるつもりであつたが、同人夫婦に子ができないため、昭和一八年二月三男亡上原政一を政治夫婦の養子とする養子縁組の届出をしたが、亡政一は昭和三一年一月六日死亡した。その後、被相続人は、亡政一の妻ムツミと不仲になつたため、昭和三九年四月不動産を贈与して、ムツミとその亡政一との間の子(相手方林礼子、同小川恵子、同大沢博、同大沢悦子)を別居させ、ムツミは復氏した。そこで、被相続人は、その後、五男相手方修を政治夫婦の養子にしようとしたが、修が同意しないため、被相続人の弟上原忠吉の子である申立人を説得し、昭和四〇年三月二三日自己の養子として養子縁組の届出を了した。
申立人は、もと○○職人として働いていたが、被相続人と養子縁組以後は、被相続人、政治夫婦と同居し、農業後継者として農業に専念し、被相続人死亡後は一家の中心となつて被相続人の遺産を維持管理し、農業経営を維持している。
ところで、申立人は、上記の経過によつて被相続人と養子縁組をした後、被相続人から昭和四〇年六月二四日別表4(略)番号四、五記載の土地の贈与を受け、被相続人が弟の上原忠吉名義で自作農創設特別措置法による売渡しを受けていたもの)、昭和四二年二月一三日同表番号一、二記載の土地(被相続人が上記同様相手方カズ名義で売渡しを受けたもの)を、更に、昭和四三年四月三日同表番号三記載の土地を、それぞれ贈与されたことが認められる。
これらの申立人に対する贈与は、上記養子縁組の前後の経過に照らすと、単に、養子縁組に際し、或いは生計の資本として特別の利益を与えたものではなく、むしろ、農業後継者たる申立人の被相続人の財産の維持形成に対する寄与並びに被相続人および政治夫婦の扶養等に対する報酬ないしは対価的な意味において、被相続人が贈与したものと推認すべきである。
そこで、本件各相続人の具体的相続分の決定に当つて、申立人の被相続人の財産の維持形成についての寄与分を具体的に評価することが困難である本件のような場合においては、申立人の具体的相続分の決定に当つて、上記受贈分を特別受益としては考慮しないことが、被相続人の意思にそうばかりでなく、相続人間の公平を図ることになるというべきである。
従つて、申立人については、具体的相続分の決定につき考慮すべき特別受益はない。
(4) 亡政一の代襲相続人
被相続人は、前記のとおり、亡政一死亡後、同人の妻ムツミと不仲になり、姻族関係を消滅させて、ムツミおよびその子相手方礼子、恵子、博、悦子らを別居させるに際し、別表5(略)記載の土地をムツミ母子に贈与することとし、同表番号一、二記載の土地については相手方博名義に、同表番号四、五記載の土地についてはムツミ名義にそれぞれ所有権移転登記をなし、同表番号三記載の土地については、被相続人が、かねて亡政一名義で取得していたため、相続を原因として上記ムツミ母子の共有名義の登記を了した。
以上の事実によれば、別表5(略)番号四、五記載の土地は、ムツミに贈与されたものであるが、同表番号一、二記載の土地および番号三記載の土地の三分の二の共有持分については、相手方礼子、恵子、博、悦子の生計の資本として贈与されたものであると認められる。
従つて、同表番号一、二記載の土地および番号三記載の土地の三分の二の共有持分は、相手方礼子、恵子、博、悦子の具体的相続分を決定するに当つて考慮すべき特別受益というべきである。(その相続開始時における価額は、合計二二四万七、九〇〇円となる。)
(5) その余の相続人については、具体的相続分決定につき考慮すべき特別受益があつたことを認めうる証拠はない。
5 相続分の算定
相続開始時における被相続人の相続財産の価額は、別表1(略)記載のとおり合計二、八一三万六、一一五円である。
そして、民法九〇三条の適用を受ける特別受益分の価額の合計は、前記第四項のとおり合計二、二一九万九、二七二円であるから、相続財産とみなされる価額は、五、〇三三万五、三八七円である(想定相続財産。)
(28,136,115+22,199,272 = 50,335,387)
上記想定相続財産について、前記法定相続分の割合に従つて一応の相続分価額を計算すると、申立人尚美、相手方政治、同カズ、同芳子、同節子、同喜美、同修については八分の一に当る各六二九万一、九二三円となり(一円未満切捨)、相手方礼子、同恵子、同博、同悦子については三二分の一に当る各一五七万二、九八〇円(一円未満切捨)となる。
ところで、相手方修は、前記のとおり、上記法定相続分による本来の相続分の価額六二九万一、九二三円を超える一、〇六七万七、四〇〇円の特別受益を受けているので、民法九〇三条二項により、同人には具体的相続分がないことが明らかである。
そこで、改めて、相手方修を除く相続人の間で、具体的相続分を算定することとし、前記相続財産の相続開始時の価額と相手方修を除く相続人の特別受益額を合算した価額三、一八一万二、八七六円(想定相続財産)について、相手方修を除く相続人の間で法定相続分の割合に応じて配分計算すると、申立人、相手方政治、同カズ、同芳子、同節子については、七分の一の割合で各四五四万四、六九六円となり、相手方礼子、同恵子、同博、同悦子については、二八分の一の割合で各一一三万六、一七四円となる(一円未満切捨)。
そして、上各相続分価額から、更に、前記各特別受益額を控除すべきであるから、これを控除した結果、各人の相続分の価額は次のとおりとなる。
(1) 申立人、相手方政治、同芳子、同喜美、同節子は各四五四万四、六九六円。
(2) 相手方カズは三一一万五、八三五円。
(4,544,696-1,428,861 = 3,115,835)
(3) 相手方礼子、同恵子、同博、同悦子は、各五七万四、一九九円。
(1,136,174-2,247,900×1/4 = 574,199)
6 遺産分割の基準
遺産分割においては、相続開始から分割時までの間に年月が経過し、相続財産の価額に変動が生じている場合には、分割時における相続財産の再評価額について、相続開始時の相続財産の価額を基準に算定された各相続人の相続分の価額の比率に従つて再分配するのが、公平の理念に適合し、相当である。そこで、次のとおり遺産分割時における具体的相続分の価額を算定する。
(1) 相続財産の本件鑑定時における評価額合計は、別表1(略)記載のとおり、四、〇三〇万八、九三一円である。
(2) 第五項のとおり相続開始時における相続財産の価額を基準に算定された各相続人の相続分の価額の比率は次のとおりとなる。
(イ) 申立人、相手方政治、同節子、同芳子、同喜美は、各自 4544/28136
4544696/4544696×5+3115835+574199×4 ≒ 4544/28136
(ロ) 相手方カズは 3116/28136
3115835/4544696×5+3115835+574199×4 ≒ 3116/28136
(ハ) 相手方礼子、同恵子、同博、同悦子は各自 575/28136
574199/4544696×5+3115835+574199×4 ≒ 575/28136
(3) そこで、上記鑑定時における評価額による相続財産について、上記比率に従つて再分配の金額を算定すると、次のとおりとなる(一円未満切捨)。
(イ) 申立人、相手方政治、同節子、同喜美、同芳子は、各自六五〇万九、九四三円
(40,308,931×4544/28136 ≒ 6,509,943円)
(ロ) 相手方カズは四四六万四、一二五円。
(40,308,931×3116/28136 = 4,464,125)
(ハ) 相手方礼子、同恵子、同博、同悦子は、各自八二万三、七七一円。
(40,308,931×575/28136 = 823,771)
(4) 従つて、以上の各相続人の相続分の価額に従つて、本件相続財産を、鑑定時の価額を基準にして、具体的に分割すべきこととなる。
7 各相続人の職業その他の事情
(1) 申立人、相手方政治、同節子
申立人は、前記のとおり、被相続人の農業後継者として、同人の養子となり、従前の○○職を辞め、農業を専業として、別表1(略)番号四一ないし四七記載の土地、建物に居住、使用し、被相続人の遺産である農地、山林等を維持管理しているものであるが、相手方節子は準禁治産者であるため、同人の保佐人に選任され、同人を扶養しており、将来も扶養を継続すべき立場にある。また、相手方政治も、生活能力に乏しいため、申立人は、相手方政治夫婦と生活を共同にして扶養しており、将来も扶養を継続する考えである。
そして、申立人は、本件遺産分割に当つては、農業経営を維持し、相手方節子および政治夫婦を扶養して行くために、農地を確保し、他の相続人に対しては山林、債券を分与し、不足分については金銭債務負担の方法による清算を希望している。
相手方政治代理人トシコは、遺産の分割を希望せず、申立人が農地を確保して、農業経営を継続し、相手方政治、トシコ夫婦の扶養を続けることを希望している。
(2) 相手方カズ
相手方カズは、夫および長男夫婦らとともに農業に従事しているが(水田二町、畑八反、山林五ないし六反)、現物分割を希望せず、相手方政治夫婦および節子を扶養する申立人が現物を取得し、自分は多少の金銭の給付を受けることを希望している。
(3) 相手方芳子
相手方芳子は、主婦であり、夫が病気のため○○○○○工場経営を廃業して以来、○○内職や貸家の家賃収入のほか養女の給料によつて生計を維持しているが、生活は楽ではなく、遺産分割については、不動産の現物分割を希望せず、原則的に申立人ら実家を守る者が取得すべきであると考え、自己の相続分には固執しないが、生前贈与も受けていないので、相当額の金銭的給付を望んでいる。
なお、相手方芳子は、相手方修および亡政一の妻子らに対して好感情を有していないが、その他の相続人との人間関係には特に問題はない。
(4) 相手方喜美
相手方喜美は、○○会社を経営する夫と子とともに中流程度の生活を営む主婦であるが、夫は被相続人に対し一二〇万円の貸金債務を有している(別表1(略)番号四九)。
相手方喜美は、遺産分割については、原則的には、申立人が被相続人を後継するのであれば、相続分を放棄する考えであつたが、本件調停申立て前の申立人と相手方修らとの争いの経過から、申立人に対し不信感をもつようになり、自己の相続分に従つた分割を主張するに至つたが、しかし、遺産分割の結果取得する分から前記夫の貸金債務に相当する分を控除した残額については、相手方節子に譲渡するか、または氏神の社の修繕費に充てるという意思を有している。
なお、相手方喜美は、申立人に対し対立的感情を有しているが、その他の相続人に対しては特に悪感情を有していない。
(5) 相手方礼子、同恵子、同博、同悦子
相手方礼子、同恵子は、いずれも会社員である夫と結婚した主婦であり、相手方博は○○○○○○工として働いており、相手方悦子は○○○○店員として働き、母ムツミと同居している。
同相手方らは、いずれも相続分に従つた不動産の現物分割を主張し、同人ら四名の共有として取得することも差し支えないと考えている。なお、特に取得を希望する特定の不動産はない。
8 遺産分割の方法
(1) 以上のとおりの諸般の事情を総合的に考慮すると、本件相続財産のうち別表1(略)番号四一ないし四七記載の宅地、建物は、申立人、相手方政治、同節子に共有で取得させるのが相当であり(持分各三分の一)、農地については、農業によつて生計を維持している申立人、相手方政治、同節子、同カズの間で分割取得させ、その余の相続人については、別表1(略)番号三〇ないし三六記載の山林、同表番号四八、四九記載の債権を分割取得させ、不足分は金銭給付により清算させるのが相当である。
(2) ところで、農地については、申立人、相手方政治、同節子の間では、敢えて分割する必要はなく、三者の共有として、申立人および相手方政治夫婦に共同管理させることとするのが相当であるから、本件相続財産のうち農業経営を維持するのに必要であると認められる主要な農地を、上記三名の相続分の合計額一、九五二万九、八二九円から前記宅地、建物の取得分(一、四二〇万三、八五六円)を控除した残額五三二万五、九七三円に満つるまで、共有で取得させることとする。
そこで、農地のうち別表1(略)番号一、二、七、八、九、二一記載のもの(合計五三〇万三、一六〇円)を上記三名に持分各三分の一の割合による共有で取得させるのが相当である。
従つて、申立人、相手方政治、同節子は、別表1(略)番号一、二、七、八、九、二一、四一ないし四七記載の宅地、建物、農地を共有で取得することとなり、その合計は一、九五〇万七、〇一六円で、各自の持分は六五〇万二、三三八円となり、各相続分に相当する。
(3) 申立人、相手方政治、同節子が上記取得した以外の農地については、申立人が取得を希望しており、他の相続人で特に農地の分割取得を希望する者はないこと、申立人の農業経営の維持および農地の維持管理等の諸点を考慮すると、申立人の相続分超過分について金銭的債務負担による清算が可能な範囲においては、申立人に取得させるのが相当である。しかし、申立人の支払能力に鑑み、余り高額の債務を負担させることは相当ではなく、他方、相手方カズは、農地の現物分割は望んではいないが、農業を営んでおり、かつ、申立人との人間関係にも格別問題はないので、一部の農地については、申立人との共有で取得させることとしても、その土地の管理や爾後の分割について両者間で円満に解決しうるものと期待できること、その他各農地の価値等の諸点を総合的に考察し、別表1(略)番号五、六、三七ないし四〇記載の農地等(合計一二四万五、〇九六円)は申立人に、同表番号一〇、一一、一二、一八、一九、二二、二三、二四、二五記載の農地(合計四三四万九、七〇〇円)は申立人と相手方カズの共有に(持分各二分の一)、同表番号三、四、一三ないし一七、二〇、二六ないし二九記載の農地(合計一三三万五、五一九円)は相手方カズに、それぞれ取得させることとする。
なお、別表1(略)番号五〇記載の定期預金債権も、申立人に取得させるのが相当である。(債権の内容がやや不明確であるので、他の相続人に分割取得させるには不安が残る。)
従つて、申立人は、以上により自己の相続分を超過する分について、金銭的債務負担により清算すべきである。
(4) 相手方カズは、上記農地の取得分が三五一万〇、三六九円となり(4,349,700×1/2+1,335,519)、その相続分価額四四六万四、一二五円に対し、なお九五万三、七五六円不足していることになるので、その不足分については申立人から同額の金員を支払わせることとする。
(5) 次に、上記以外の相続財産を相手方芳子、同喜美、同礼子、同恵子、同博、同悦子の間で分割することとなる。
別表1(略)番号三六記載の山林は、本件相続財産中の山林のうち最も評価額が高く、上記相続人のいずれの相続分の価額をも大幅に超過するので、上記相続人らのうち相続分の多い相手方芳子と同喜美に取得させることとし、同人らはもともとそれ程強く現物分割を望んでおらず、また、同人らの間には格別人間関係に問題がないこと等の諸点を考慮し、共有で取得させても差し支えがないと考えられるので、上記山林は同人らに共有で取得させることとする(持分各二分の一。価額各四〇一万三、九八二円)。
相手方喜美については、別表1(略)番号四九記載の債権の債務者がその夫であることを考慮し、同債権を相手方喜美に取得させるのが相当であり、また、同表番号四八記載の債券もまた同人に取得させると、同人の相続分の不足額は八五万五、九六一円となるので、その不足分については申立人から同額の金員を支払わせることとする。
相手方芳子については、上記山林の共有持分二分の一(四〇一万三、九八二円)のほか、別表1(略)番号三〇ないし三三記載の山林(一四三万九、一五五円)を取得させ、不足額一〇五万六、八〇六円については、申立人から同額の金員を支払わせることとする。
相手方礼子、同恵子、同博、同悦子については、その希望を考慮して、別表1(略)番号三四、三五記載の山林を共有で取得させ(持分各四分の一。各五九万一、〇四五円)、各相続分の不足額は各自二三万二、七二六円となるので、その不足額については申立人からそれぞれに対し同額の金員を支払わせることとする。
9 以上のとおり遺産分割することとし、本件手続費用中、鑑定に要した費用一一万円については、遺産分割による受益の程度を考慮して、主文第三項のとおり負担者を定め、その余の手続費用は各自の負担とする。
よつて、主文のとおり審判する。
(家事審判官 多田元)